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ピロリ菌感染

ピロリ菌とは?

 ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の粘膜に生息している、らせん形(ヘリコプターのヘリコと同じ意味です)をした細菌です。通常最近は、胃酸の中で生きいくことは出来ません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素をもっており、この酵素で自分の周りアルカリ性にすることが出来ます。これにより胃酸を中和し胃の粘膜に住み着くことが出来ます。

 

感染経路は?

ピロリ菌の感染経路ははっきりとはわかっていません。多くは、口を介した感染と言われています。またピロリ菌が定着している場合には乳幼児期から感染していると言われています。大人になってから感染する場合には一過性の感染と言われています。上下水道が十分に普及していなかった世代に多く、元々土壌に存在することから衛生環境に関係していると言われています。現代の感染率は低いとされています。

 

ピロリ菌が引き起こす病気は?

 ピロリ菌の感染による炎症が続くと、本来の胃粘膜組織が消失した萎縮性胃炎を起こします。また胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。

 その他に、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病などとも関連しており、これらの治療にピロリ菌の除菌が行われます。胃MALTリンパ腫では60-80%、特発性血小板減少性紫斑病では40-60%に有効であるとされています。

 また、胃癌とも密接に関連しており、Uemura等(1)の検討によると、ピロリ菌感染者と非感染者では10年間の経過で、胃癌の発生率が感染者では2.9%、非感染者では0%と報告されています。ピロリ菌を除菌することで、3年以内の胃癌発生が約1/3に抑えられるとの報告もあります(Fukase等(2))。除菌を行っても、今までの胃炎が全て元に戻るわけではありません。その為除菌をしても胃癌が発生するリスクはあります。

 また自分だけではなく、お子様やお孫様に感染させてしまう可能性もあるため、ご家族を守る意味でもピロリ菌の除菌は非常に重要です。

文献1:Uemura N et al. Helicobacter pylori Infection and the Development of Gastric Cancer. NEJM. 2001; 345:784-789.

文献2:Fukase K et al. Effect of Eradication of Helicobacter Pylori on Incidence of Metachronous Gastric Carcinoma After Endoscopic Resection of Early Gastric Cancer: An Open-Label, Randomised Controlled Trial. Lancet. 2008; 372: 392-397.

 

ピロリ菌感染の証明方法

 内視鏡検査やピロリ菌の抗体検査でピロリ菌感染があったからと言って、100%ピロリ菌がいるとは限りません。過去に感染があり、現時点でがピロリ菌がいなくなっている場合も萎縮性胃炎に代表されるピロリ菌関連の胃炎は観察されますし、血液中の抗体はピロリ菌がいなくなっても残っていることがあります。また過去に除菌療法を行っていなかったとしても、他の病気の治療(例えば、肺炎や尿路感染、感染性胃腸炎などで抗生剤と胃薬を一緒に使用したなど)で偶然にも除菌されてしまっている可能性もあります。

 そのため、内視鏡検査でピロリ菌関連の胃炎があった場合にも、現時点でピロリ菌感染している状態なのかどうかを判断する必要があります。

 検査の方法は、主に3種類で、それぞれにメリット、デメリットがありますが、どれか1つでも陽性であればピロリ菌が現在感染していることの証明になります。注意点としては、【いずれの検査もまず内視鏡検査を受けて萎縮性胃炎(慢性胃炎)があることが証明されないと保険適応にならない】という点です。

 

1. 内視鏡検査(組織検査)

 内視鏡を行った際に、胃の粘膜を採取して顕微鏡の検査を行ったり、特殊な薬液の反応で、ピロリ菌の存在を証明する検査です。採取した組織にピロリ菌がいなければ陰性という結果で出てしまうことから、ピロリ菌の感染を証明するための生検検査は近年行われなくなっています。何かしらの変化があり、癌を証明するため・癌を否定するために組織検査を行った場合には、一緒にピロリ菌の存在を調べることが出来ます。

 

2. 血液検査(ピロリ菌抗体検査)

 採血で検査出来ます。簡便に検査できるという利点はありますが、ピロリ菌の除菌を行った後では偽陽性といって、現時点ではピロリ菌感染はしていないのに、過去に体の中で作られた抗体が残っており陽性となる場合があります。そのため、ピロリ菌除菌を行った後の判定には適していない検査です。

 

3. 呼吸による検査(尿素呼気検査)

 錠剤を1錠内服して、一定時間後に呼気中に含まれる成分を分析することでピロリ菌感染があるかどうか調べる方法です。時間がかかること、胃薬や抗菌薬を内服していると偽陰性(本当は除菌に成功していないのに、成功という結果で出てしまうこと)になる可能性があります。抗体検査のような偽陽性がないため除菌の判定には非常に便利です。(※コロナウイルス感染症の観点から当院では行っておりません。)

 

4. 便検査(ピロリ菌抗原検査)

 検便と同じ要領で検体を採取する必要があるので、やや面倒ですが、偽陰性、偽陽性ともに少なく非常に優れた検査です。

 

 

ピロリ菌除菌療法

 ピロリ菌の除菌は1週間、3種類の薬を内服します。3種類のうち2種類は抗菌薬(抗生物質)、1種類は胃酸を抑えるための制酸薬です。現在最も効果が高いという組み合わせの治療では、除菌成功率は約90-95%と言われ非常に成功率の高い治療です。抗生剤にはペニシリンが含まれるため、過去にペニシリンのアレルギーがあった患者様は使用できません。

1回目の除菌療法(1次除菌)に失敗した場合は、抗生剤の組み合わせを変更し、2回目の除菌療法を行います(2次除菌・保険適応です)。2次除菌で不成功だった場合には、専門的な除菌が必要になるため、ピロリ菌外来を行っている病院へ紹介となります。

 

※また、ピロリ菌の除菌に成功したからと言って、今までの胃へのダメージがゼロになる訳ではありません。幼少期に感染し、60歳で除菌をしたとしても、約55年はピロリ菌による慢性炎症が起こっていたことになります。除菌後も胃癌発がんの可能性はあります。定期的な検査を行ってください。

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