膵癌とは?
1.膵癌とは?
2.日本で膵癌にかかる患者さんの数は?
3.膵癌のリスクファクターは?
4.膵癌の死亡数、生存率は?
5.なぜ膵癌は予後が悪いのか?
1.膵癌とは?
膵臓に発生する悪性腫瘍のことです。消化を助ける膵液が流れる管である、「膵管」に発生する「膵管癌」が90-95%と膵癌の大半を占めています。その他に膵のう胞性疾患に分類される膵管内乳頭粘液性腫瘍が癌化した膵管内乳頭粘液性腺癌や、腺房細胞癌(消化液をつくる腺房細胞から発生する癌です)、粘液性のう胞腺癌、退形成性癌などがあります。
その他に癌ではありませんが、神経内分泌腫瘍と言われる悪性腫瘍が2-3%認められます(AppleのCEO、スティーブ・ジョブズ氏が罹患し亡くなったことで一般に有名になった腫瘍です。)
膵臓に発生する主な腫瘍性病変を下に示します。
2.日本で膵癌にかかる患者さんの数は?
・膵癌は年々増加しています。
・2020年のがん罹患数予測では、膵癌は、男性・女性ともに6位と予想されています。下記に上位10位を示します。
男女計 | 男性 | 女性 | |||
部位 | 罹患数 | 部位 | 罹患数 | 部位 | 罹患数 |
全がん | 1,012,000 | 全がん | 582,200 | 全がん | 429,900 |
1. 大腸 | 158,500 | 1. 前立腺 | 95,600 | 1. 乳房 | 92,300 |
2. 胃 | 135,100 | 2. 胃 | 93,300 | 2. 大腸 | 68,600 |
3. 肺 | 130,000 | 3. 大腸 | 90,000 | 3. 肺 | 43,100 |
4. 前立腺 | 95,600 | 4. 肺 | 86,800 | 4. 胃 | 41,800 |
5. 乳房 | 92,900 | 5. 肝臓 | 27,800 | 5. 子宮 | 28,200 |
6. 膵臓 | 42,700 | 6. 膵臓 | 22,100 | 6. 膵臓 | 20,700 |
7. 肝臓 | 41,300 | 7. 食道 | 21,800 | 7. 悪性リンパ腫 | 16,500 |
8. 悪性リンパ腫 | 35,700 | 8. 腎・尿路 (膀胱除く) | 20,700 | 8. 肝臓 | 13,500 |
9. 腎・尿路 (膀胱除く) | 30,500 | 9. 悪性リンパ腫 | 19,200 | 9. 甲状腺 | 13,400 |
10. 子宮 | 28,200 | 10. 膀胱 | 18,200 | 10. 卵巣 | 13,400 |
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
・がん罹患率=年間に人口10万人あたり何人が「がん」と診断されるかという指標があります。
男性の膵癌の罹患率は34.4人/10万人
女性の膵癌の罹患率は30.4人/10万人
・これらを参考に、相模原市周辺の膵癌の罹患率を計算すると、相模原市では年間約224人の方が膵癌になると考えられます(下図参照)。また膵癌の生涯なってしまうリスクは男性では2.6%(39人に1人)、女性では2.5%(41人に1人)と言われています。
3.膵癌のリスクファクターは?
膵癌のリスクファクターは様々あり、膵癌診療ガイドラインでは以下が挙げられています。
聞きなれない特殊な病気も含まれていますので、頻度が高いもので、わかりやすいものをまとめると
・血縁者に膵癌がいる方
・血縁者に乳癌や卵巣癌がいる方
・糖尿病の方(新たに診断された方、既に糖尿病と診断されていて、血糖コントロールが悪くなった方)
・男性で若い時から肥満の方
・慢性膵炎の方
・膵のう胞(膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN))がある方
これらに当てはまる方は、定期的に膵臓の検査をしてください。
4.膵癌の死亡数、生存率は?
膵癌の死亡数は全癌腫の中で第4位です。
・膵臓癌の5年相対生存率
※5年相対生存率:がんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。 100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救い難いがんであることを意味します。
残念ながら、膵癌は年間の罹患数と死亡数がほとんど同じであることが特徴で、5年相対生存率は全癌腫の中で断トツで低く(男性8.9、女性8.1)、膵癌がいかに予後不良であるかを示しています。「がんの王様」と呼ばれる所以が、この値に示されています。
5.なぜ膵癌は予後が悪いのか?
「膵癌は癌の王様、見つかった時には手遅れ、膵癌になったら助からない。」これは世間一般でよく聞く膵癌の印象です。
前述したように決して間違った印象ではありません。実際に膵癌の予後は、全癌腫の中で最も悪く、発見された時点で進行していることが多いからです。
それには、以下の理由があります。
①膵癌の早期発見が難しいこと。
②手術後に再発する頻度が高いこと。
③有効な化学療法が少ないこと。
これらを解決しないことには、膵癌の予後は改善できません。特に重要となるのが膵癌の早期発見です。早期発見に勝るものはありません。
詳しくは、膵臓癌を早期発見するためには?をご参照ください。